電子書籍の表紙を自分で作成するたのノウハウ
電子書籍の表紙の作り方ですが結論から述べると「商業出版の本のデザインを真似る(参考にする)」と失敗が少なく、また見映えもよくなります。
デザインをそのまま丸っきり真似たら盗用になるので、色を変えたり、場所を変えたり、細部を変更する必要はあります。
もしくは、部分的に真似る(参考にする)のもいいです。
ちなみに、絵を描く能力と、デザインの技術は、俯瞰図で見たら近い位置にあるけど、同じではありません。
デザインはできるけど絵は描けない人は多いです。
当然、その逆もいます。
けれども、絵が描けるなら、それは大きな強みになります。
デザインの幅が大きく広がります。
表紙については外注するのもひとつの方法です。
ランサーズなどを利用すればプロのデザイナーさんに表紙の作成を頼むことも可能です。
価格は2~3万円ぐらいから。
この記事を書いている人のレベルは……
職業訓練で、広告デザインの専門学校に半年間通いDTPとWebを勉強しました。
デザイン会社で働いたなど、職業としてデザインに関わった経験はありません。
従って、デザイナーとしてのレベルは底辺です。
電子書籍の表紙を作るのって難しい?
電子書籍の表紙は、デザインの難易度で言うと……何と比べるかによりますが、個人的には低い部類に入ると思います。
要素が少ないです。
タイトル、サブタイトル、著者名は確実として、あとは絵なり写真なりです。
難易度は低いけど、作るとなると、半日~1日がかりになるでしょうか。
しかも時間を1日かけたからといって、よいものができるとは限らないし、難しいところです。
電子書籍の表紙を作るときの要点
電子書籍の表紙を作成する上で重要な点を以下に書きだしてみます。
1 アプリの使い方をマスターする。
既存のデザインを真似る(参考にする)ためには、とにかく画像系アプリを使えるようにならないと話になりません。それが第一歩です。
アプリの使い方を理解すると、既存の表紙をみて(これは、あのソフトで、このようにすれば同じことができる)というのが分かるようになります。
完全に理解出来なくても、ネットで検索すればヒントはつかめます。
ソフトの使い方が分からないと、検索さえできません。
画像系のアプリケーションでお勧めはPhotoshopやillustratorです。
比較的手に入りやすいのはPhotoshopElementsです。
電子書籍の表紙を作る程度ならElementsで充分です。
2 何が重要なのか理解する。
最も重要な部分を認識すること。
本の表紙であれば、タイトルが重要です。
たとえば「自衛隊のごはん」というタイトルがあったとして、何が重要か。
「自衛隊」なのか。それとも「ごはん」なのか。
どちらも重要だけど、今回あえて序列をつけるなら「ごはん」のほうが上ということにします(正確には内容による)。
従って「ごはん」のほうを目立つようにしたほうがいいです。
3 コンセプトを決める。
コンセプトは基本的な概念のことをいいます。
理想的なのは、コンセプトと作品の内容がばっちり合っているデザインです。
専門学校の講師は、何かをデザインする上でコンセプトが何をおいても重要だと力説していました。
コンセプトは骨組みであり、細部に宿るものでもあります。
電子書籍の表紙ぐらいなら、コンセプトが弱い、もしくはコンセプトが存在しなくても、特に問題はないかもしれません。もちろんコンセプトがしっかりしていればそれに越したことはありません。
4 文字は分解する。
本の表紙で、イマイチだなこれは、というのは、たいてい、文字をそのまま配置しています。
面倒だけど文字は文節ごと、もしくは1文字ごと分解するのが基本です。
文字をそのまま配置すると町内会のチラシみたいになります。
文字の大きさをそれぞれ変更するだけで、ずいぶんと印象が変わります。

解説
1 そのまま配置。駄目なパターン。
2 3つに分解し「の」だけ小さくしました。
3 更に細かく分解して、頭文字を強調。
4 文字を分解するとこんな感じで配置することも可能。
5 要素は可能な限り揃える。
タイトルやキャッチコピー、著者名などの要素は基本、左端や右端、上端や下端を揃えます。
配置についてはグリッド形式、自由形式などあり、あえて崩して揃えない、というやり方もあります。
近接法則なども概要ぐらいは頭に入れておいたほうがいいです。
●ゲシュタルト心理学
6 色を知りましょう。
膨張色、収縮色とかあって、これを理解していないと、ちぐはぐになる場合があります。
基本的には、あまり沢山の色は使わない方がいいです。
参考とする表紙がどんな色を使っているのか観察するのがいいです。
補色などの知識もあったほうがいいです。
青と黄色。桃色と緑など。
7 人の意見を聞く。
デザインに限りませんが、可能ならできるだけ多くの人の意見を聞くべきです。
視野狭窄になりがちというか、本人は気づかないことを、ちらっと見た人が指摘するのはよくあります。
慧眼というかなんというか。
言われてみれば確かに、なぜ気づかなかったんだろうと思ったりします。
人の意見は神妙に拝聴しましょう。とても有り難いことです。
もっと他にもあるかもしれませんが、ざっと思いつくのはこのぐらいです。
表紙作成の一助となれば幸いです。
と、ここで締めてもいいのですが、そんなに言うなら表紙を作ってみろよ、ということで、いくつか実例をお見せします。
電子書籍の表紙実例
陸海空自衛隊に取材した回想録みたいなものを書きまして、未完成なので、出版の予定もないんですが、その取材体験記の表紙を作ってみます。


ということで、自衛隊にまつわる写真や食事画像を多く配置して、盛りだくさん的な部分を強調したほうがいいでしょうか。
よくあるタイプのグリッド形式にしました。
アイキャッチとして「ごはん」の文字を自由形式で配置。
文字の色が黒だと芸がないので白で、下に緩い感じの橙の楕円を配置しました。
オレンジは食事のイメージ。
うーん、タイトルの右横の写真のサイズが小さくて全体的にイマイチ……。
あと、実は「取材体験記」が主題です。
ぱっと見て、目立つのは「ごはん」なのでこれは間違いといわざるを得ません。
ということで作り直します。


最初の表紙よりは良くなったと思います。
欲を言えば文字の隙間をもう少しきちっとしたいです。
文字色も黒だけど、色を変えるか、装飾もしたいです。
あと、写真の配置がしっくり来ないので、弄りたいところです。
写真のサイズを小さくして、枚数を増やすほうがいいかもしれません。
タイトルの周辺に隙間がありますがあそこに、航空機か戦車か護衛艦のピクトグラム的なアイコンなんて配置するといいかもしれません。
あまりやりすぎるとごちゃごちゃしそうですが。
問題点を認識したところで作り直します。


このオレンジのライン、デザイン的には「自衛隊」「食事」「取材」などに関連したものであるのが望ましいです。
思いつかなかったので単純に線のみですが。
こういう細部にコンセプトは宿るものなんだと思います。


合わせて写真の入れ替えも行いました。
食事は下半分に固めて、上は自衛隊関連。
もう少し写真を厳選したほうがいいでしょうか。
細かな調整は必要です。
ちなみにデザインにおいて「要素を斜めにする」ことがありますが、あれは無闇にやりまくると格好良くないと個人的には思います。
要素を斜めにするのはアイキャッチのためです。
その考え方で行くと、全体を斜めにするのは間違いということになります。
いくつか要素があって、1つだけ斜めにするのが良いです。
とは言っても、デザインは千差万別だから、これが答えというわけではありません。なんでもありです。全体を斜めに配置するデザインもあります。自分はセンスがないから、斜めなのにきっちりとまとまっているデザインは憧れを感じます。
上記のデザインでは「ごはん」を意図的に斜めに配置しています。
追記
「自衛隊のごはん 取材体験記」の表紙デザイン、ある人に意見を求めました。
すると――「写真が小さくて見づらい。多いよりも少ない方がいいと思う。良い写真があればそれをメインにしたらインパクトがでるかも」とのアドバイスをいただきました。
なるほど、確かにごちゃごちゃして見づらいです。
それに、視線の動きを考えてみると、最初に目に行くところは――大きな画像です。
ジャンプ率といいます。
画像のサイズが同じだと、視線の誘導ができません。ジャンプ率がないので。
1枚、メインとなる写真を選んでデザインを変更したほうが良さそうです。
ということで作ってみました。


こちらのほうがインパクトがあると思います。
ツメが甘いところがあるのでもう少しいじりたいですがこれで仮完成です。
デザインをして、最初とがらりと変わってしまうのはよくあることです。
「絶対すくみず黙示録」の表紙
もう一例、忌川タツヤさんの「絶対すくみず黙示録」の表紙を作ってみます。
※忌川タツヤさんには掲載OKの許可をいただきました。


背景は「すくみず」です。
まずは単に字をそのまま書いてみました。
こういう表紙は多いです。
一応、レイヤースタイルで白の境界線を設定しているので見映えはそこそこではあります。
この表紙、何が重要か? これは「すくみず」だと判断しました。
ということで手を加えてみました。


デザインは難しいです。
答がない場合が多いです。
もしくは複数の答があることもしばしば。
時間をかけようと思えば際限なくかかります。
どこで切り上げるか、妥協するかも大事です。
最初は上手にできません。
けど時間をかければ、かけた分は返ってくると思います。